キスをしたり、相手から触れられたりしても思ったように濡れず、挿入すると痛い。セックスをしたくないわけではないし、「前はもっと濡れていたのに」と身体の反応が気になることがあります。
そんなとき、「自分の気持ちが足りないのかな」と考えてしまうことがあります。でも、相手への好意や性的な興奮、セックスをしたいという意思は、すべて同じではありません。相手に「感じていない」と思われそうで、濡れないこと自体が気になる人もいるでしょう。
この記事では、身体が濡れることと「したい」という気持ちをいったん切り分けながら、「濡れないこと」の何に困っているのかを確かめて、今の自分の気持ちにじっくり向き合っていきます。
セックスで濡れないのは、気持ちが高まっていないから?
セックスで濡れないと、「興奮してないのかも」「相手のことを本当は求めていないのかな」と考えてしまうことがあります。けれど、本人が感じている性的な興奮と、身体の反応は必ずしも同じように表れるわけではありません。
日本家族計画協会も、性的な興奮が高まっていても、十分に濡れないことがあると説明しています。濡れ方には個人差があり、年齢や体調、ストレスや緊張など、さまざまな要因が関係します(出典)。
そのため、「この人とセックスしたい」「触れられると気持ちいい」と思っているのに、思ったほど濡れないことはあり得ます。反対に、身体に反応が出たことだけで、その行為を続けたいという意思まで判断することもできません。
身体が濡れたり、オーガズムに達したりすることと、本人がその行為を望んでいることは同じではありません。身体に性的な反応が出たとしても、それだけで性行為への同意を示すものではありません(出典)。
まずは、「濡れなかった」という身体の反応と、「今セックスをどう感じているか」を別々に見るところから考えましょう。
濡れにくさには、どんなことが関係する?

濡れにくさには、性的な気持ちだけでなく、そのときの身体の状態や状況も関係します。
たとえば、更年期などで女性ホルモンの一つである「エストロゲン」が低下すると、腟やその周辺が乾燥しやすくなります。また、産後や授乳中にも、ホルモンの変化によって乾燥が生じることがあります(出典)。
また、ストレスや不安などが性的な反応に影響することもあります。
だからといって、「私はストレスが原因」「年齢のせい」と一つに決める必要はありません。同じ人でも、その日の身体や状況によって感じ方は変わります。
ここで知っておきたいのは、濡れない理由を自分の気持ちだけで説明できるわけではないということです。
一方、濡れにくさに加えて、挿入時の痛みやヒリつきが続く、出血があるなど、ほかにも気になる症状がある場合は、「気持ちの問題」だけで片づけず、婦人科などで相談することも選択肢になります。腟の乾燥は性交時の痛みにつながることがあります(出典)。
「濡れないこと」の何が負担になっている?

濡れないことが気になるとき、実際に困っていることは人によって違います。
挿入すると痛く、セックスを続けること自体がつらいのかもしれません。身体的にはそれほど痛くなくても、「相手に感じていないと思われそう」と、自分の反応をどう受け取られるかが気になることもあります。
また、「今日は濡れるかな」と身体の反応ばかり確かめるようになると、それ自体がセックスの時間を落ち着かなくさせることもあるでしょう。
実際に相手から何か言われたのか、自分がそう思われることを心配しているのかも分けて考えたいところです。「全然濡れてないね」と言われて傷ついた場合と、相手は何も言っていないけれど自分の中で気になっている場合では、負担になっているものが違います。
痛みを減らしたいのか。相手の反応を気にせず過ごしたいのか。それとも、「ちゃんと感じられる身体でいたい」という自分自身への期待があるのか。
濡れ方そのものより、そのことで何がつらくなっているのかを見てみると、必要としているものも変わってきます。
今の自分は、セックスをしたい?
身体の状態とは別に確かめたいのが、今の自分はセックスをしたいのかということです。
「触れられるのも好きだし、挿入もしてほしい。でも濡れにくくて痛い」という場合なら、気持ちはセックスへ向いているのに、身体の不快感が邪魔をしているのかもしれません。
一方で、キスや愛撫までは心地よくても、今日は挿入したくないこともあります。抱きしめられたいけれど性的なことはしたくない、今日はそもそも身体に触れられずに休みたい、という日もあるでしょう。
「濡れないから、本当はしたくないのだろう」と身体から気持ちを推測するのではなく、「もし濡れにくさや痛みが気にならなかったとして、今は何をしたいか」を考えると、自分の希望を見つけやすくなります。「したいのに濡れない」と「今日はしたくない」は、同じ「濡れない」という状態でも別のものです。
セックスそのものに気が向かない状態や、何が負担なのかを詳しく整理したい場合は、「セックスしたくない。何が負担で、今の自分は何を求めている?」も参考にしてみてください。

濡れないとき、自分にはどんな選択肢が合う?

濡れないときにとり得る選択肢は、今の自分が何を望んでいるかによって違います。
セックスをしたいけれど、乾燥による摩擦や痛みが気になるのであれば、急いで挿入せず、自分が心地よいペースで触れ合ったり、潤滑剤(潤滑ゼリー)を使ったりする方法があります。潤滑剤は性交時の摩擦や痛みを減らす方法の一つとして、医療機関でも紹介されています。
痛みや乾燥が続いている場合には、婦人科で身体の状態を確認することも考えられます。
一方、今はセックスをしたくないのであれば、身体を「できる状態」に近づけることだけが対処になるとは限りません。今日は挿入をしない、別の触れ合いにする、途中でやめるという選択肢もあります。
したくない気持ちはあるものの、相手を傷つけそうで断りづらい場合は、「セックスを断りたい。でも、相手を傷つけたくなくて言えないときに」でも、断ることへの迷いを詳しく扱っています。

また、最初はセックスをしたいと思っていたとしても、途中で気持ちが変わることもあります。
「どうすれば濡れるか」だけではなく、今の自分は何をしたいのか、そのためにどんな方法が合いそうかまで一緒に考えることが大切です。
濡れたかどうかだけで、自分の気持ちは決まる?
セックスをしたいと思っていたのに濡れなかったとき、「身体は正直だから、本当はしたくなかったのかな」と考えてしまうことがあります。
でも、濡れ方だけでは、気持ちのすべてを判断できません。
身体には身体の状態があり、自分にはそのときの希望があります。痛みが気になるなら身体を楽にする方法を探したいのかもしれないし、今日はセックスそのものに気が向いていないなら、身体の反応とは切り分けて見ていくことになります。
「濡れた/濡れなかった」を答えにするのではなく、身体はどうだったのか、自分はどうしたかったのかを考える。セックスで濡れないことが気になったときは、その二つを混同していないかを確かめることで、今の自分が困っていることも見つけやすくなります。

